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独りディナー
最近の、コンサートのこと(その一)
2018年05月18日
テーマ:音楽
初めて、スタインウェイのピアノを弾いたのは、何時のことだったのだろう。
中学一年生の時に、オーケストラの伴奏でピアノ協奏曲を弾いた事があるが、あれは市内では最大のホールだったから、ピアノはスタインウェイだったのかも知れない。
認識したのは、大学に入って、ピアノ科のレッスン室にはスタインウェイが並んでいるのに驚いた頃だろうか。
高度成長期の始まった頃だから、スタインウェイという名前は、まだまだ夢の世界だった。
殆どのピアノを弾く人間にとって、コンサートでは、ホールに設置してある楽器を弾く。
私の先生は、明治生まれの方だったが、日本の代表的な女流ピアニストのお一人で、「演奏会では、素晴らしいピアノが弾けるから、楽しみだったわ」とよく仰っていた。
大学を出た頃には、世の中もかなり豊かになってきていて、ホールにはスタインウェイを、というのが常識のようになっていった。
卒業後、留学したウィーンでは、当地の銘器べーゼンドルファーのピアノが多かったけれど、国立音楽大学にも少しずつスタインウェイが揃い始めていた。
音楽会では、プログラムに「今日の使用ピアノは、ベーゼンドルファー」とか「スタインウェイ」などと表記されていた。
何時の頃からか、楽器の右横に大きくブランド名が書かれる様になり、客席から一目瞭然で使用ピアノがわかるようになった。
我が家にスタインウェイのピアノが来るまで、私は自分のヤマハピアノを弾く時に、いつも本番で弾くタインウェイのタッチと響きを想定しながら、練習していた。
目的は常に、スタインウェイのタッチであり、響きなのだ。
最近は、数は少ないながら、むしろスタインウェイではないピアノが、希少価値としてもてはやされても居る。
それぞれには、独特の味わいや響きがあるけれど、それだけに楽器に適した作品は限られてしまう。
やはり、オールマイティーのスタインウェイには、数歩譲るだろう。
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