あなたは、誰かの大切な人

自分の感受性くらい 

2018年05月03日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

(東の麓 純米大吟醸 三羽の兎 を飲みながら)

   ぱさぱさに乾いてゆく心を  
   ひとのせいにはするな
   みずから水やりを怠っておいて

   気難かしくなってきたのを
   友人のせいにはするな
   しなやかさを失ったのはどちらなのか

   苛立つのを
   近親のせいにはするな
   なにもかも下手だったのはわたくし

   初心消えかかるのを
   暮しのせいにはするな
   そもそもが ひよわな志にすぎなかった

   駄目なことの一切を
   時代のせいにはするな
   わずかに光る尊厳の放棄

   自分の感受性くらい
   自分で守れ
   ばかものよ

     茨木のり子「自分の感受性くらい」

この3月でNHKを退職した有働さんのエッセイ集「ウドウロク」が文庫本になったので、午後読んでいたら、この詩がでてきた。

「へぇー」と思いつつ、同じようなことをみんなやっているんだなと、苦笑いした。

現職のころ、仕事に追われていた時、詩集を引っ張り出してながめていた。

以前ここにも書いたけれど、長田弘の詩やら、谷川俊太郎やら、辻征夫やら、清岡卓行やら、
昼間の機械的な文章とはかけ離れていながら、どこかで肉体にすっと入ってくる言葉に救われた経験があった。

あのウドウさんも同じようなことをしていたのかと、急に親しみが湧いてきました。

茨木のり子さんの詩にも沁みるものがある。

「わたしが一番きれいだったとき」とか、「冷えたビール」とか、「あいつ」とか。

特に死後刊行された詩集「歳月」はいいですね。

   あなたは もしかしたら
   存在しなかったのかもしれない
   あなたという形をとって 何か
   素敵な気がすうっと流れただけで

   わたしも ほんとうは
   存在していないのかもしれない
   何か在りげに
   息などしてはいるけれども

   ただ透明な気と気が
   触れあっただけのような
   それはそれでよかったような
   いきものはすべてそうして消え失せてゆくような

         「(存在)」


言葉で生業を立てているだけあって、有働さん、そうやって自分を奮い立たせていたんだと想うと、前よりずっと好きになりました。


   看板の女優と目の合う薄暑かな  まんぼう


(BGM: MJQ「COLLABORATION」)



      



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詩人の力

ゆりかごの夢さん

今晩は。

生きていること
いま生きていること・・・

谷川俊太郎の詩に初めて接したとき
震えました。
長田 弘 の詩にも心を繋げた時を
思い出しております。

詩人の力で今も生きています。

お酒は飲んでいませんが、
酔っています、、、。

2018/05/03 20:29:43

今日は酔ってもいいかな

さん

またしても懐かしい固有名詞に触れました。辻さんは貨物船の俳号を持つ詩人でしたし、清岡さんの奥様の岩坂恵子さんの小説も好きでした。久しぶりに書棚を探索してみたくなりましたね。
俳句をやる前は現代詩に夢中でしたから。

2018/05/03 20:00:11

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