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such is life
風薫る
2018年05月02日
テーマ:such is life
「あれは鳥なの?」
5月の空にひるがえる鯉のぼりを見て、母親に抱かれた幼児が聞いたという話を読んだことがある。
水のなかの魚を大空に泳がせるというのは、むかしの人の、なんと奇想天外な発想であろう。
鯉のぼりはやはり、初夏の薫風でなければならない。
春風でも秋風でもふさわしくないように思う。
春の風が「光る」なら、夏の風は「薫る」である。
本来、無色、無味、無臭である空気が動いた風に色香があるわけはない。
風に光や色や香りを感じるのは、詩人の心であろう。
と思うが、新緑のなかを散策すると、たしかに香りがある。
ここで「科学」をもちだすのは無粋だが、
それは植物体から発散される芳香性の微粒子によるものである。
この微粒子は、よく知られているように、フィトチッドとよばれ、細菌類を殺す作用をもっているといわれる。
五月の風をはらんで「魚体」をくねらせ、形のない風をつかむようにして、大空のキャンバスに風の姿を描く。
薫風を連れ診察室のドアを押す
鯉のぼり元町に泳ぐと気取っている
風来
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