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独りディナー
技術とハート
2016年12月05日
テーマ:音楽
映画「オケ老人」のレビューを書いていらしたPさんに、下のようなコメントを書いた。
『アマチュアのオケは、音楽にはまっていて「自分たちの演奏は、技術ではなくてハートだ!」と思っている人達の集団ですよね・・』
これは、常々私がぶつかる、避けては通れない壁なので・・。
つまり、ピアノの練習を長期間続けていると、音楽が嫌いになるのでは、といった課題、と言おうか。
時折試験やコンクールなどで、70人〜80人位の若い人達のピアノを、続けて聴く機会がある。
音大生だったり、音大を目指している人達。
彼らは、ショパンの難曲を素晴らしい速度で弾きまくる。
とにかく難しいから、必死でさらうのだろう。
でも私には、ミスを少なくして弾くためには、音色や音楽は二の次、と言っているように聞こえてしまうのだ。
『ハートより技術』なのだろうか・・。
「ちゃんと譜面通りに弾けてもいないのに、音楽的に弾こうなんて・・」と言った学生達の謙虚(?)な考え方。
どうやらそれは、レッスンで先生に対して生意気な事はできない、といった自己規制なのらしい。
でも、その土壌を作ったのは、言わずもがなである。
これは、西洋音楽は輸入文化だからともいえるし、未だに古典芸能の精神が残っているのかも知れない。
こつこつと、毎日同じ曲、同じパートを繰り返しさらう。
これは、きっと体育会系の練習である。
恐ろしいのは、譜面通りに、型を崩さずに練習を続けていくうちに、気持ちのこもらない練習時の響きが、弾いている脳にしっかりと組み込まれて行く事である。
「さてと、いざ音楽は」と思う頃には、時既に遅しで、努力した挙げ句の表現はさながらメッキの様になってしまうのが、オチである。
表現芸術は、言うまでもなく、「まず作品ありき」である。
邦楽などで、師匠の芸を盗め、というのは理にかなっている。
つまり目の前に、お手本がまずあって、其処へ未熟な己を少しずつ近づけて行くのだから・・。
ピアノの場合は、次回までに練習する曲を、弾いて聴かせてくれる先生は、余り居ないのではないだろうか。
今の私は、極力弾いて聞かせる様にはしているけれど、若いときはそうではなかったし。
最近でこそ、簡単にユーチューブで聴くことができるけれど、自分で楽譜を読んでいくのも勉強であるから、一音一音を、音に出していく練習方法が主流なのだと思う。
つまり、作品に対するイメージが皆無で、練習を続けるケースが多いのだ。
先述のアマチュアオケは、「是非、ブラームスの交響曲を弾きたい!」等と思って練習している人達だから、その頭の中には、例えばカラヤンやベームやケンペ等の大好きだった演奏のイメージが、はっきりあるに違いない。
ピアノの技術の練習は、言うまでもなく大変である。
大勢で弾くオケとは違う、ソロの大変さもある。
毎日数時間練習しなくてはとても仕上がらないし、ピアノは暗譜が必須だから、その努力は半端じゃない。
だからこそ、その努力を始める前に、これからの道筋を定かにする必要があるのだと思う。
どんな作品で、自分はどんな風に表現したいのか。
そこから、練習を開始するべきなのだが、残念な事に初見で弾いた位で作品を理解するには、大抵の曲は余りに技術が難しすぎる。
だから、音楽の漂っている環境に居てこそ、若い音楽家達が育っていくのだろう。
私達の様な、老齢者にとっての務めは、少なくとも身の回りに居る若い人達の為に、そういった音楽的環境を作り出していく事だろう。
「アマチュアの心を失わずに、技術を磨く」
そんな教師に、私はなりたい。
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ミルさん
コメントありがとうございました。
カラオケの経験はあまりないのですけれど、点数が出るんだそうですね。
でも、機械が採点して、満点というのはね・・。
ユダヤの世界では、会議で満場一致になると、その議題は不採用になると聞いた事があります・・。
童謡を歌った、テノールのお話。
きっと彼は、楽しんで歌っているのでしょうね。
演奏会に行くと、アンコールが一番よかった、と言うことがよくあります。
プログラムの曲目を弾き終えて、ホッとしたところで、気に入った小品を弾く。
そのテノールの人は、いつもアンコール的な気持ちで歌っているのかも知れませんね。
2016/12/06 06:58:42
こんばんは
シシーさん、こんばんは。
技術とハートの問題は、どのジャンルにも言えることですね。
難曲を一つの間違いも無く、必死で弾く学生さんたちの、70〜80人もの演奏を連続で聞く「辛さ」(もしかして)は、分かるような気がします。
ピアノは門外漢ですが、カラオケの採点機で100点を取った人の歌に感動するかというと、良くぞ丁寧に一つも外さずお見事!という感嘆でしかないです。
レベルが違い過ぎて、ごめんなさい(笑)
昔、童謡のコンサートで、テノール歌手が歌い始めた時、隣席の姉と二人で同時に、鳥肌の立った腕を思わず、さすったことがありました。
二人で顔を見合わせた時、お互いにうっすらと涙ぐんで。
聞きなれた歌、誰が歌ってもきっと上手く歌えそうな易しい歌。
でも、その時、巧い、若しくは旨いと感じたのです。
その人の想いの深さが伝わった瞬間でしたね。
そんな演奏家が増えてくれると良いですね。
2016/12/05 19:53:23
彩さん
私はいつも、真面目に音楽に向き合いながら、色々試行錯誤は、しています。
そして、それを思わずブログに書き連ねてしまいます。
でもアップして、彩さんのように好意を持って受け取って下さるコメントを読むと・・。
「口で言うのは、簡単」という事を、うっかり忘れていたことに、気づくのです。
口では大層なことも言えますよね。
今の私は、自分でも入れるくらいに大きな穴を、探したい気分で居ます。
2016/12/05 16:46:13
藤の花さん
コメントありがとうございました。
アマチュアとプロの線引きは、分野によって異なるでしょうね。
無線の場合は、私には解りませんが。
演奏の場合は、往々にして「音大卒」が看板だと、勘違いしがちです。
でも私は当然ですけれど、「それで食べていけるかどうか」だと思っています。
私は卒業したのがピアノ科なので、プロと見て下さる方も沢山居ますが、私は主人の収入で生活していますし、自らプロとは名乗れません。
でも、アマチュアではない、という自負もあるんです。
つまりピアノ界には「ピアノ教師」という、プロとアマチュアの間に存在する、グレーゾーンがあるからです。
2016/12/05 16:39:20
師匠はいつも、
私が言いたいと思うピンポイントを、虫眼鏡を使ってるかのように、鋭く見つけて下さいますね。
私が言いたいことなんて、ほんの一欠片に過ぎませんので・・。
表現する者の、というより表現したいと思う者の、繰り言を見つけて下さるのは、本当に嬉しい事です。
2016/12/05 16:29:04
思わず
ブラボー!っと、立ち上がり拍手した
くなります。
シシーさんのピアノ演奏が終わった瞬間。
最後の二行は何の技術を習得するのにも
通じる集約された想いですね。
2016/12/05 15:35:30
技術
MY hobbyの一つ、アマチュア無線は素人ではありません。プロに負けない様、日々技術を磨いて努力しています。好きだからこそ24Hいつでも世界と通話出来るし努力を厭いません。
2016/12/05 14:33:22
楽しいです
このようなブログを読んでいると、自然に、心が浮き立ちます。
知らない世界のことに、なるほどなあと、頷かされるからです。
それをまた、自分の棲む世界に、引き戻してみる。
援用出来るものがある。
所詮、表現の根っこは、同じだからなあ……
と気付かされ、さらに楽しくなるのです。
ブログの、延いては、SNSの、一つ効用でありましょう。
2016/12/05 13:26:31