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“辛口批評”人形劇団プークの公演レパートリー 

2016年05月16日 外部ブログ記事
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「平和のタネをこころにまこうin世田谷」の第一部は人形劇団プーク公演「こころ耕す人形劇」と題して宮沢賢治原作「霧と風からきいたお話」とイギリス童話「うかれバイオリン」の二本立てでした。

プークは約90年近い歴史がある人形劇団ですので、演出、演技、大道具・小道具、人形、照明、音響の全てにおいて優れたものがあります。霧の場面では「オーガンジー」という透き通った生地を使っていました。
日比谷高校新入生歓迎会で二部演劇部は木下順二原作の「彦市ばなし」を上演した時、管理人は演出をしました。彦市が天狗を騙して、姿が消える隠れ蓑を取ってしまう場面では「オーガンジー」を被ったときは姿が見えなくなるという演出にしました。衣装を担当した部員と一緒に新宿・オカダヤ本店に買いに行った楽しい思い出があります。

さて、二つのレパートリーの「霧と風からきいたお話」の兵隊場面と「うかれバイオリン」の死刑の場面は、ヤングパパとヤングママに連れられてきた観客の乳幼児には理解不能のお話です。

「宮沢賢治記念館」の学芸員に電話で質問をしたら、「朝に就ての童話的構図」という童話で、筑摩文庫第8巻にあるそうです。
「歩哨」「聯隊」「伝令」「陸地測量部」という軍隊用語は、「靖国神社ガイド」の管理人ならば理解できますが、人形使いの俳優からこの台詞が飛び交うのです。但し「スナイドル式の銃剣」の台詞はありませんでした。

ネット「青空文庫」から転載
・・・・・・・・引用・・・・・・・・・・・・・・・
朝に就ての童話的構図 宮沢賢治

 苔いちめんに、霧がぽしやぽしや降つて、蟻の歩哨は、鉄の帽子のひさしの下から、するどいひとみであたりをにらみ、青く大きな羊歯の森の前をあちこち行つたり来たりしてゐます。
 向ふからぷるぷるぷるぷる一ぴきの蟻の兵隊が走つて来ます。
「停とまれ、誰たれかツ」
「第百二十八聯隊の伝令!」
「どこへ行くか」
「第五十聯隊 聯隊本部」
 歩哨はスナイドル式の銃剣を、向ふの胸に斜めにつきつけたまま、その眼の光りやうや顎あごのかたち、それから上着の袖の模様や靴の工合、いちいち詳しく調べます。
「よし、通れ」
 伝令はいそがしく羊歯の森のなかへ入つて行きました。
 霧の粒はだんだん小さく小さくなつて、いまはもううすい乳いろのけむりに変り、草や木の水を吸ひあげる音は、あつちにもこつちにも忙しく聞え出しました。さすがの歩哨もたうとう睡ねむさにふらつとします。
 二疋の蟻の子供らが、手をひいて、何かひどく笑ひながらやつて来ました。そして俄に向ふの楢の木の下を見てびつくりして立ちどまります。
「あつあれなんだらう。あんなとこにまつ白な家ができた」
「家ぢやない山だ」
「昨日はなかつたぞ」
「兵隊さんにきいて見よう」
「よし」
 二疋の蟻は走ります。
「兵隊さん、あすこにあるのなに?」
「何だうるさい、帰れ」
「兵隊さん、ゐねむりしてんだい。あすこにあるのなに?」
「うるさいなあ、どれだい、おや!」
「昨日はあんなものなかつたよ」
「おい、大変だ。おい。おまへたちはこどもだけれども、かういふときには立派にみんなのお役に立つだらうなあ。いゝか。おまへはね、この森を入つて行つてアルキル中佐どのにお目にかゝる。それからおまへはうんと走つて陸地測量部まで行くんだ。そして二人ともかう云ふんだ。北緯二十五度東経六厘の処に、目的のわからない大きな工事ができましたとな。二人とも云つてごらん」
「北緯二十五度東経六厘の処に目的のわからない大きな工事ができました」
「さうだ。では早く。そのうち私は決してこゝを離れないから」
 蟻の子供らは一目散にかけて行きます。
 歩哨は剣をかまへて、じつとそのまつしろな太い柱の、大きな屋根のある工事をにらみつけてゐます。
 それはだんだん大きくなるやうです。だいいち輪廓のぼんやり白く光つてぷるぷるぷるぷる顫へてゐることでもわかります。
 俄にはかにぱつと暗くなり、そこらの苔こけはぐらぐらゆれ、蟻の歩哨は夢中で頭をかかへました。眼をひらいてまた見ますと、あのまつ白な建物は、柱が折れてすつかり引つくり返つてゐます。
 蟻の子供らが両方から帰つてきました。
「兵隊さん。構はないさうだよ。あれはきのこといふものだつて。何でもないつて。アルキル中佐はうんと笑つたよ。それからぼくをほめたよ」
「あのね、すぐなくなるつて。地図に入れなくてもいいつて。あんなもの地図に入れたり消したりしてゐたら、陸地測量部など百あつても足りないつて。おや! 引つくりかへつてらあ」
「たつたいま倒れたんだ」歩哨は少しきまり悪さうに云ひました。
「なあんだ。あつ。あんなやつも出て来たぞ」
 向ふに魚の骨の形をした灰いろのをかしなきのこが、とぼけたやうに光りながら、枝がついたり手が出たりだんだん地面からのびあがつてきます。二疋の蟻の子供らは、それを指さして、笑つて笑つて笑ひます。
 そのとき霧の向ふから、大きな赤い日がのぼり、羊歯もすぎごけもにはかにぱつと青くなり、蟻の歩哨は、また厳めしくスナイドル式銃剣を南の方へ構へました。
・・・・
もう一本の出し物はイギリスの昔話「うかれヴァイオリン」でした。
「ある若者」は「トム」という名前で、「木こり」は「大地主」となっていました。大地主が役人に銀貨を盗まれたと訴えたので、牢屋に入れられ、広場の絞首台で死刑になるところで、バイオリンを弾き出すことになります。下手には太いロープの絞首台がありますが、プークは「演劇リアリズム」をはき違えているとしか考えられません。
現在、国会では「刑事訴訟法改正案」が審議されていますが、トム少年は「えん罪」のために死刑になりそうになったことになります。死刑廃止の論議もされている時代です。プークは観客の乳幼児たちに何を教えたいのでしょうか。
・・・・・・・・引用・・・・・・・・・・・・・・・
 むかしむかし、ある若者が、お百姓さんの家で働きました。
 若者は三年もの間、朝から晩まで働き続けましたが、お百姓さんはお給料をくれません。
 そこで若者が文句を言うと、「ふん、なまいき言いやがって。なら一年で銅貨一枚、三年で三枚だ」と、銅貨を三枚だけくれました。
 とても少ないお給料ですが、若者はそれでがまんをすると旅へ出ました。

 森を進むと、途中で小人が現れました。
 小人は若者に頭を下げると、若者に言いました。
「どうか、お金をめぐんでくだされ」
「うん? この銅貨かい? いいよ」
 人の良い若者は、三枚の銅貨を気前良くあげました。
 すると小人は、とても喜んで言いました。
「お礼に、何かを差し上げますよ。何でも欲しい物をおっしゃってください」
「じゃ、ヴァイオリンをくれよ」
「ヴァイオリンですか。それなら、良いのがありますよ。 それをひくと、みんながおどり出すやつが」
 小人は背中に背負った袋からヴァイオリンを取り出すと、それを若者に渡しました。
「わあ、すてきなヴァイオリンだ。ありがとう」
 若者はうれしくなって、ヴァイオリンをかなでながら旅を続けました。

 しばらくすると年寄りの木こりが、若者を呼び止めました。
「お前さん、銀貨一枚やるから、ここの木を切っとくれよ」
「いいよ」
 若者は引き受けると、おじいさんのオノで大木を切り倒してあげました。
 すると年寄りの木こりは、
「なんだ。こんなにかんたんに切り倒せたのか。これなら、銅貨一枚でよかろう」と、銀貨をくれる約束なのに、銅貨しかくれなかったのです。
「さあ、金を受け取ったら、はやく行け」
 木こりが若者を追い払おうとするので、若者は手にしたヴァイオリンをひきはじめました。
 すると木こりが、おどりを始めたのです。
「ど、どうしたんじゃ? わしは、おどりたくなんかないぞ!」
 木こりはわめきましたが、体が勝手におどり続けます。
 そのうちに息が苦しくなって、若者に言いました。
「助けてくれ! ヴァイオリンをやめてくれ! 約束通り、銀貨をやるから!」
 若者がヴァイオリンをやめると、木こりのおどりがやっと止まりました。
 そして木こりは約束の銀貨を払うと、若者をうらんで役人にうったえました。
「旅の若者が、この年寄りから銀貨をだまし取りました。どうか、つかまえてください!」
 それを聞いた役人たちは若者を追いかけると、すぐにつかまえて言いました。
「年寄りをだまして銀貨を取り上げるやつは、死刑だ!」
 すると若者が、役人たちに頼みました。
「では死ぬ前に、一度だけヴァイオリンをひかせてください」
「いいだろう」
 木こりが止めるのも聞かずに、役人は若者にヴァイオリンを渡しました。
 若者はそれを受け取ると、ヴァイオリンをひきました。
 そのとたん、役人たちばかりか町中の人々がおどりはじめ、やがてイヌやネコまでもがおどり出したのです。
「た、たのむ。ヴァイオリンをやめてくれ!」
 役人たちは、若者に頼みました。
「いいですよ。ぼくがお金をぬすんだんじゃないと、信じてくれるのなら」
「わかった。あんたは悪くない」
 役人たちが答えたので、若者はヴァイオリンをやめるとまた旅を続けました。
 おしまい
・・・・
中国旅順市に旧日本帝国旅順監獄がありますが、安重根が絞首刑になった「処刑室」に天井からロープが下がり、囚人が落下する床板が開いています。

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