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旧友のお嬢さん　

2015年05月20日
テーマ：シニアライフ

高校のクラスメイトから、コレクター展の案内が届いた。

もう何回目になるのであろう。

東京に住んでいた頃は、何度か見せて貰ったけれど、当地に越してきてからも忘れずに案内をくれるのは嬉しい。


高校一年生の頃、彼女ともう一人のクラスメイトと、三人でつるんでいたなあ。

二人とも、飛び切りの美人で、上品な少女達だった。

何故、その中に私を入れてくれたのか、今となっては共通項も余りはっきりしないのだが・・。


卒業後はそれぞれの方向に進み、30歳ちかくになって皆、結婚した。

結婚相手が、一人は木彫作家で偶然私とは同じ大学卒だったり、私の主人の勤務先が友人の一人の勤務先と同じ省庁だったり・・。

暫くは何となく、夫婦ぐるみで交流が続いていた。


三人の中で、ずっと仕事を続けてきた友人は、いつしかご主人と絵画のコレクションを始めた様だった。

私はてっきり、お家に飾って楽しんでいるのかと思っていたのだが。

どうやら二人の目的は、若い作家たちを発掘して、彼らを応援する形で、作品を購入することだったらしい。

毎週末、銀座界隈にある１００軒程の画廊を順次訪れては、アンテナを張って探し求めていた。


私も一度、彼らに同行させてもらった事がある。

横で見ていると、作品を見出すことが、二人にとっては、自分たちの感性を表現するひとつの方法の様に思えた。


そして、倉庫に大切に所蔵して、時折画廊でコレクター展を開催するのだ。

子供のいない二人にとっては、所蔵する作品群を展示する事は、子供の成長を見る様な処があったのではあるまいか。

夫婦ともに公務員であったが、芸術に関心を寄せる二人はいつも、私の演奏会にも足を運んでくれた。


もう一人の友人のご主人は、元々仏師の息子さんだった。

ご本人も、大学では仏師として木彫を学んだらしい。


でも、暫くしてクリスチャンだった友人の影響で、彼も受洗した。


その辺の葛藤に関して、訊いたことは無い。

簡単に訊ねられる程、親しい中でもなかったし。

でも、何度か見に行った個展の様子から、次第に彼の作品群は仏像から子供たちへと変化していった様だった。


その友人から、喪中の葉書きが届いたのは三年位前だったろうか・・。

木彫作家のご主人が亡くなられた知らせであった。


長野県に居を移していた彼女とは、住んでいる場所も遠くて、その後は何度か手紙のやり取りをしていただけであったが。


私は年賀状の住所には、いつもメールアドレスを印刷しているので、今年は「メール交換でもしませんか」と一言付記してみたのだった。


すると二月頃に、「一人暮らしなので、貴女のアドレスを打ち込むまでに時間がかかるけど、そのうち送信できると思う」という、のんびりとした葉書きが来た。

元気そうな様子であった。

そして、つい数週間前、初めてのメールがやっと送られてきた来たのだった。

お互いに近況報告をして、私も娘が結婚したこととか孫は居ない事など書き並べ、向こうもお嬢さんが油絵をしている、等と書いてきてくれた。


今回のコレクター展の案内は、偶然その翌週位に、届いた。

添付されてきた作家たちを見ていると、その中に上記の油絵の御嬢さんの名前を見つけたのだ。

彼らは、早々と若き才能を見出していたに違いない。


その名前を見て、コンピューターおばあちゃんは、すぐさま、グーグルに飛んだ。

すると、友人そっくりの素敵な29歳の御嬢さんの写真に遭遇。

更にそのお嬢さんの、経歴の勇壮な事は、見事であった。


特に、亡きお父様と同じ大学院で、修士課程修了作品が、大学に買い上げられたという素晴らしいプロフィールに、私は言葉も無く感動してしまったのだ。


まあ、すぐ母親である友人に、お祝いのメールを送ったけれど・・。

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